Vol.122大学入試改革から子どもの学びを考える③
これからの「学び」はどうあるべきか

2018.08

 新学習指導要領では、「学びの質にシフトした」と言う点で注目されています。「何ができるようになるのか」という観点で示された「資質・能力」は、「知識及び技能」「思考力,判断力,表現力等」「学びに向かう力,人間性等」の三点に整理されました。先にも触れましたが、「どのように学ぶか」という点が重視されます。学校教育では、生涯にわたって能動的に学び続けることができるよう、授業の工夫・改善を重ねていくことが、より一層求められることになります。大学におけるアクティブ・ラーニング型授業の導入は、小・中・高等学校のどの段階でも求められ、「話し合い」活動や「問題解決・課題解決型」の授業が重視されます。

 また、他者とともに協働して学び合うことも求められます。そのためには、やはり「知識」が必要です。以前の「学歴社会」においては、知識量は他者と競争するための尺度でもありました。しかし、これからの時代における知識とは、他者とともに問題解決、課題解決していくための重要なツールです。スマートフォンで簡単に調べることができ、知識は得られます。大事なのは、それらを駆使しながら考えていくことです。そのため、子どもたちにとっては、たくさん読書し、文化に触れ、他者と対話する学びが必要です。

 ある大学の学長先生が、入学式で学生に送った式辞で以下のように述べています。「大学での学びは、根拠ある知識を身に付け、論理的に物事を考え、起こっていくことの現象を客観的に見る視点を身に付け、そしてそれらを駆使して自分で判断し行動する力を身に付けることです」。全くその通りだと思います。そして、このような力を身に付けるのは、決して大学に入ってからスタートすることではありません。人が学ぶということは本来そういうことであり、大学入試改革が子どもの学びを豊かに変えると言ってもよいのではないかと考えます。

東京学芸大学准教授 鈴木聡
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