Vol.245話合い活動が得意な生徒を生かす授業とは

2023.6

 2023年度から特定の分野で特異な才能をもつ子どもに対し、効果的な指導法や支援策をまとめるなど、文部科学省が本格的な支援に乗り出すとニュースになったのも記憶に新しいと思います。個人の特性を教師が理解し、通常学級で特異な才能をもつ生徒の得意・興味を活かす「個別最適な学び」が求められており、通常学級の授業の中でどのように個を高めることができるか、これは教育に携わるものの命題となっています。

 私は文学的文章の授業では必ず、ディスカッションなどの話合い活動を通じた読みを深める活動を行っています。個々の読みが他者との意見交流によって、批判的また多面的・多角的になり深化すると考えているからです。中学3年生の「高瀬舟」の授業では、江戸時代の法律や倫理観について調べるなど、自分の知識だけでなく様々な情報を駆使してディスカッションを行っていました。話合いが得意な生徒(ここでは話すことに特異な能力を発揮する生徒を指します)はディスカッションの時は、一段とやる気がみなぎり、何とかしてみんなが思いつかないような見方はないかと情報を集めていました。

 ここで注意したいのが、たくさん意見を述べることが良いとは限らない、ということを生徒に意識させることです。必ず意見には「根拠」、「理由づけ」が必要となります。教科書から「根拠」を探し、説得力を持たせるために「理由づけ」を行います。先ほど挙げた法律や倫理観は、この「理由づけ」で効果を発揮します。また活動の最後に説得力があったと思う人を選び、その理由とともに投票させます。周囲から認められることによりさらに高みを目指すようになるだけでなく、自信がつくことで話合い以外の活動への苦手意識の減少にも繋がります。また他の生徒の見本にもなるため、クラス全体の成長にも良い影響を及ぼします。

 このように「①根拠のある話合いを行うこと。②賞賛する場面をクラスで作ること。」を意識して授業を展開しています。また②は話合いに限らず、国語の授業全般で行います。なるべく多くの場面で、色々な生徒が認められる機会を作るようにしています。

 また私の経験上、話合いが得意な生徒は「書くこと」が苦手なことが多いように思います。ICTや口頭で代替するなど、学びのUD化も彼らの自己肯定感を失わない方法の一つなのではないでしょうか。実際パソコンで文章を作成し、プリントに貼って提出している生徒もいました。特別なことを無理に取り入れるのではなく、生徒の得意をうまく授業で活用する視点を持つことで個も集団も高めることができるのではないでしょうか。

豊島区立千登世橋中学校
村松香苗
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