Vol.226数学におけるアクティブ・ラーニングを見直す

2021.11

 高等学校では令和4年度から新学習指導要領が全面実施となります。平成30年の改訂から、授業において集団での学びを実施されている先生が多くなってきたと勤務校でも感じます。
 私も例に違わず新学習指導要領に向けた授業改善に関する研修に参加したことがあります。そこで私は研究授業の形態を知識構成型ジグソー法にすることを考えました。研究授業は全教員が参観し、その後には授業検討会も実施しました。研究授業では生徒1名につき教員は2名が担当し、生徒の変容を細かく観察する形で実施しました。授業検討会では好意的な意見が多く、生徒からのアンケートでも普段の授業に比べてわかりやすかったとの意見が多かったです。私としてはこの授業に手応えを感じていました。
 しかし、定期テストを実施すると、研究授業で扱った題材の正答率が最も低かったのです。私は大変に戸惑いました。

 単元は数学Aの場合の数で、格子状の道には何通りの道順があるかを考えます。研究授業では出発点から目的地までの間に経由しなくてはならない場所を設定した問いをたてました。問題配布時には誰一人として正答を導ける生徒はいませんでした。エキスパート活動では、①計算方法、②目的地までの縦と横の関係の考え方・積の法則の2つに分けました。エキスパート活動の問題は比較的取り組みやすく、ほぼ全員の生徒が理解してくれました。エキスパート活動で得た知識をそれぞれが持ち帰って共有するジグソー活動では生徒の活発な姿が見られました。結果として授業冒頭では正答にたどり着けなかった生徒たちが完答することが出来ました。振り返ってみると、ここに落とし穴があったように思います。
 ジグソー法では他者が学んできた知識を用いて問題を解きます。最終的に問題が解けていますが、他者から学んだ知識が自分のものになっているとは限りません。特に数学では、生徒同士の学び合いの中で、
 「この問題はこの公式を使う。」
 「こうやって解くみたいだよ。」
といった言葉を耳にすることがあります。このような場合、問題の背景が理解できなくても問題を解くことができてしまいます。まさに私の研究授業がそうだったのかもしれません。
 数学の問題では「わかる→解ける」の順ではなく、「解ける→終わり」の段階で生徒が満足していると見受けられることがあります。これからの授業に求められていることは、主体的で対話的な深い学びです。グループワークを導入した授業はアクティブに生徒が活動しているように見えます。しかし、課題設定等に工夫をしないと、さまざまな取り組みも有効な手立てにならないことを痛感する研究授業になりました。

静岡県立富岳館高等学校
斉藤嶺
pdfをダウンロードできます!