Vol.156「教員の働き方改革」②

2019.08

 近年、教員の多忙化はますます深刻化しています。これまでの調査より、約50年前と比べて、教科の授業と特別活動の占める割合には大きな差異がないものの、課題活動の時間割合が大きくなってきており、特に中学校では部活動指導の比重が大きくなっていること(神林,2015a)や、小学校では学校行事、個別指導などが多忙感に強く影響していること(神林,2015b)などが明らかとなってきました。

 東京学芸大学EDUAI(AI×教育プロジェクト)では、「教員の働き方改革プロジェクト」として、教員の働きやすい環境への提言に向け、勤務の実態把握、多忙化に関わる要因と影響、働き方改革に対する意識について、アンケート調査を行いました。

 ここでは、調査結果の一部をご紹介します。

アンケート調査では、調査対象とした市の公立小学校に勤務する全教員を対象に、504名からの回答を得ました。その結果、全体の約45%が週60時間以上の勤務をしており、全体の77%が、過去5~10年の間に業務量が増加したと感じていることが明らかとなりました。

 また、女性は持ち帰り業務が多く、男性は休日出勤が多いなど、年代や性別による違いは若干みられるものの、7割以上の教員が持ち帰り業務または休日出勤を行っていることが分かりました。一部では、毎週特定曜日の定時帰宅やタイムカード・出勤システムなどが導入されていましたが、教員が抱える業務量は減っていないため、根本的解決には至らず、持ち帰り業務や休日出勤が常態化していると考えられます。

 次回は、多忙化の要因や働き方改革に対する意識に関する調査結果をご紹介します。

東京学芸大学 生活科学分野 准教授 萬羽郁子
参考文献
神林寿幸:教員の業務負担に着目した生徒指導・特別活動―過去の実態調査の経年分析―,東北大学大学院教育学研究科研究年報,64(1),229-246,2015a
神林寿幸:周辺的職務が公立小・中学校教諭の多忙感・負担感に与える影響―単位時間あたりの労働負荷に着目して―,日本教育経営学会紀要,57,79-93,2015b
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