Vol.247ICTを活用して授業中・授業後の生徒の質問や指摘を活性化するには

2023.9

 授業中、説明が一段落して、「ここまでで何か質問ある?」という問いかけをすることはありませんか?場の雰囲気作りの問題もあると思いますが、私が授業でこのような問いかけをしたら、教室はシーンとなることでしょう。問いかけに返事をして間違えたり、的外れなことを言ったりしたら恥ずかしいというのは、誰しもが抱く感情です。特に高等学校の数学の授業において、全体の場で質問や指摘ができる雰囲気を醸成するのは、至難の業だと思います。

 しかし、授業中や授業後に個別に受けた質問や指摘が、的確に本質を捉えた鋭いものであった、ということはよくあります。そういう質問や指摘を全体に共有する場面を作れないかと思い、私はいくつかの方法を試してみました。

 1つめはGoogle chatの活用です。本校では1,2年生が1人1台Chromebookとグーグルアカウントを持っているので、授業中必要に応じてGoogle chatに書き込むことができるようにしました。しかし、この方法はうまくいきませんでした。

 その要因として、本校の運用上のルールにより投稿者を匿名にできないこと 、机が狭いこと があげられます。投稿者名がクラス全体に公開されてしまうので、結局冒頭に述べた感情面の問題の解決には至らなかったのだと思います。また、教科書・紙・筆記用具を机の上に置き、さらに補助的に使うChromebookを常に机の上に出しておくのはあまり現実的ではなかったようです。

 次に、LINEオープンチャットを試しました。LINEオープンチャットは、匿名で参加できること 、LINEアプリは私が受け持っていたクラスの全生徒がスマホで使用できたこと が選択した要因です。静岡県教育委員会ではLINE等のSNSを使っての生徒との個別のやりとりを禁止していましたで、DMができないこと、LINEグループとLINEオープンチャットの機能の違いなどを管理職に説明・相談し、使用可を得ました。

 結果としてLINEオープンチャットの使用はそれなりの成果をあげることができました。匿名であったことで授業中や授業後に質問が投稿され、その質問に答える形で内容が深まったり、自分自身も解説の至らなさに気づいたりすることになりました。

 情報技術の発展により、授業もますます進化していくことになるでしょう。情報技術を活用する上で、学校現場では技術的、物理的、学校運営上など様々な障害がありますが、現状をネガティブに捉えることなく、その時点でできることを模索しながら日々の教育活動に取り組んでいきたいものです。

 ちなみに挿絵は大学院に入ってから学んだ「グラフィックレコーディング」の技術を使って下手なりに描いてみました。

静岡県立科学技術高等学校
久保田博昭
pdfをダウンロードできます!