Vol.000未来の車文化を拓くヒント ― 子ども視点の指標開発

 2016年6月、一般社団法人日本玩具協会が主催する「おもちゃショー」に東京学芸大こども未来研究所が出展した際、「子ども視点の理解に焦点をあてた取り組みがしたい」「自動車そのものや自動車のある生活の楽しさを子どもたちに伝えていきたい」とお声かけくださったのがホンダアクセスKIDS部の方々でした。

 株式会社ホンダアクセスは、ホンダグループの自動車用アクセサリーメーカーであり、子どもと自動車をテーマとした研究を推進するために”KIDS部”を立ち上げました。これからの車社会を考えていくにあたって、いまの子どもたちが車との関わりを楽しみ、将来、車のある生活を描いていくことができることを目指したいという一方、いまの親のニーズに重心を置いている開発の現状とのギャップを解消するために、子ども視点を理解できるような取り組みに力を入れていきたい、とのことでした。

 実際に共同していく中では、様々な視点から自動車を捉え直すことや、子どものあそびの様子から子どもの視点を整理できるような取り組みを行いました。

 例えば、マンガやSF映画に登場するような憧れとしての車の姿や、これまでのCMでの車の描かれ方を概観することで、私たちと車の関係について、一度、既存の知識体系を解体し、また再構築できる土台を作っていきました。

 子どものあそびの様子からは、子どもが持っているいくつかの視点を整理し、きっと子どもたちが夢中になってあそんでいるとき、このような要素が子どもたちを動かしているのであろう、という子どもの内面を描き出した指針を作成しました。この指針は今回の取り組みにおける成果であり、今後、ホンダアクセスのモノ・コト開発における1つのツールとして機能していくことが期待されています。

honda

 東京学芸大こども未来研究所では、「遊びは最高のまなび」というモットーを掲げ研究活動を行っています。研究者の中では、「遊びとはなにか」という問いについて、画一的な論は未だ存在していない、と感じています。C. S. Rogers(1994)は「研究者の数だけ遊び論が作られることになってしまっているという現状を打破できていない」と述べ、木下(2017)は「遊びはその包含する範囲が不明瞭であり、定義が困難な現象である」としています。そのような中、今回、ホンダアクセスとの活動において、J. N. Lieberman(1965)の提唱したPLAYFULNESS概念を参考にし、あそびを行う子ども自身の人格特性に着目をし、そこから子どもの視点を深めていくことができたことについて、意義深いものであったと感じています。

 これから、車と私たち人間はどのような関係性を築いていくのでしょうか。いまの子どもたちが大人になった時、車と人間の間には、なにか新しい関係性が生まれているのでしょうか。今回の共同を基として、ホンダアクセスKIDS部が引き続き研究を進めていく先に、この問いが解かれることを楽しみに感じています。

東京学芸大こども未来研究所
小田直弥
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