Vol.068家庭科の授業におけるアクティブ・ラーニング②
当たり前を可視化する

2018.11

 家庭科では、自分自身の日々の生活を当たり前と捉えるのではなく、見つめ直してよりよくしていこうとすることが大切です。そこで、普段から当たり前に行われている「手洗い」に注目した授業を紹介します。

 調理実習は子どもたちにとって楽しく関心の高い活動でありますが、安全に調理をすること・衛生的に調理をすることについては大切だとは思っているものの、疎かになってしまうこともあります。調理実習時に手を洗うことは子どもも意識して行っています。しかし、手洗いの仕方については、意識する機会も少なく、手洗いによって汚れがしっかり落ちているかを確認することもあまりありません。そこで、手に蛍光剤を付けて洗い、ブラックライトで確認することで、汚れを可視化して現状を理解できるようにしました。また、タブレットPCを活用し手洗いの様子を撮影して、自分の様子も可視化していくことにしました。

 手洗いは二人一組で行い、一人が蛍光剤を付けて手洗いをし、もう一人はタブレットPCでその様子を撮影しました。手洗い後は手をブラックライトにあて、洗い残しがないかを確認しました。自分が思っていた以上に、汚れ(蛍光剤)が残っていることに、驚いている様子でした。

 その後、撮影した映像を再生して、自分たちがどんな洗い方をしていたかや、なぜ洗い残しがあったかを確認しました。ちゃんと洗えていると考えていた子どもたちにとって、映像を見て検証をすることは、自分の行動を客観的に見ることができ、よりよくしようとするきっかけとなりました。

 そして、手洗いの結果から、どうしたらきれいに手を洗えるかを考えました。子どもたちからは、クロス洗い(指と指を交差させて指の間を洗う)、爪研ぎ洗い(爪を手のひらにあてて、猫が爪を研ぐように洗う)といった、洗い方を分かりやすくネーミングした提案がありました。

 話し合いや発表をもとに、もう一度手洗いを行いました。最初とは違い、様々な洗い方を試しており、きれいに手を洗うとはどういうことかを実感している様子でした。

 学習のふり返りでは、「手洗いは、汚れが見えるからするのではなく、普段の手洗いもしっかりしていきたい」「衛生は調理実習だけでなく、風邪予防や食中毒の予防にもつながっていくので、ちゃんとした手の洗い方を覚えたい」などがあがり、今回の授業を通して、自ら課題を捉え、改善していくことができました。

東京学芸大学附属小金井小学校教諭 西岡里奈
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