Vol.070アクティブ・ラーニングを促進する自己評価・相互評価の在り方①
ICEモデルを活用したルーブリック

2019.01

 主体的・対話的で深い学び(いわゆる「アクティブ・ラーニング」)の視点から、学び全体を改善し、個の学習ニーズや一人一人の個性に応じた資質・能力を育成するような学びを実現していくことが求められています。

 児童の主体性を育むことが学習の成果を高めることは明らかでしょう。主体性を育むためには、多くの「できた」「分かった」を実感し、「次はこうしたい」や「もっと知りたい」と思うことが必要です。そのためには、児童自身が学びを積極的に振り返り、何ができるようになったのかを客観的に把握し、次の目標を自ら立てる過程を大切にした授業を行わなければなりません。そして、自己評価、相互評価が自然に行われる学習集団になったとき、真のアクティブ・ラーニングが実現すると考えます。

 自己評価・相互評価は、これまでの授業でもルーブリックによる客観的な評価基準が多く取り入れられています。しかし、多くのルーブリックは「よくできた」「できた」「もう少し」など、児童の能力を測定するものです。アクティブ・ラーニングを実現する評価は、結果よりも学習の過程を重視した質的な評価ができるルーブリックでなければならないと考えます。

 そのような評価ルーブリックを作成するにあたり、ヤングとウィルソンが提案する評価モデルであるICEモデルを参考にしました。

 ICEモデルのIはIdeas(基礎知識)、CはConnections(つながり)、EはExtensions(応用)です。

 すなわち、基礎知識を習得した後、その知識をつなげ、応用するという、学びを深める段階のルーブリックを作成することで、児童は学びがどの段階にあるかを把握することができます。これは、まさにアクティブ・ラーニングを実現する評価ルーブリックと言えます。

 写真が作成したルーブリックです。このルーブリックは理科の学習過程と結び付けて作成しました。児童は自己評価により「できた」と判断した場合には銀のシールを貼ります。その他の色のシールは友達からの評価です。シールに記入された数字は、何回目の実験での評価なのかを表しています。「考えをもつ」の段階では、最初の段階であるため比較的どの児童も達成しやすい目標を並べていて、児童が「できた・分かった」を実感しやすいようにしています。そして、「つなげる」「いかす」の段階に進むことにより、深い学びを達成できるようにしていきます。このルーブリックを使用することにより、児童は自分ができるようになったことや、次に何をしたらよいのかが明確になり、より主体的に学習できるようになります。

 次回は、このルーブリックを活用した具体的な授業について説明します。

東京都渋谷区立西原小学校教諭 後藤勝洋
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