Vol.107学校における特別支援教育1①
高等学校におけるインクルーシブ教育 誰もが安心して受けられる授業を目指して

2020.07

 教室で行われる授業はある程度、環境が一定しています。しかし、体育はグラウンドや体育館など様々な場所で授業を行い、さらに天候により左右されることもあり、授業環境は一定ではありません。その中で、生徒が落ち着いて受けられる授業を目指した取り組みの一例を紹介します。

1 ホワイトボードを活用した授業展開
 体育の授業を行う環境は音がよく反響する体育館や、様々な音が聞こえるグラウンドなど、刺激が苦手な生徒には落ち着いて受けるには難しい環境です。そこで、始業前にホワイトボードに本時の学習内容と流れを示します。「本時のねらい」「本時の学習内容」「挨拶・体調確認」「体操」「練習」「ゲーム」などよく使用するものは、あらかじめマグネットなどで作成しておくと効率的です。この下準備こそ生徒が落ち着いて授業を受けられる下地になります。本時の授業の流れを把握し、自ら授業の目標を立てることができます。また、口頭での技術の説明は理解しにくいため、イラストや写真などの補足資料を掲示することにより生徒の理解を深めることができます。

2 体育ノートを活用する
 生徒がホワイトボードを見て、本時の目標を立て、体育ノートに記載しています。自分で頑張りどころを考え、達成するためにはどうすれば良いかを自ら考え言語化することにより意欲的に取り組むことができます。さらに人と比べないため「できた」「できない」という評価ではなく、自ら立てた目標に対し、自己評価することにより何をどのように学ぶのかの思考を促進することができます。

3 「できない」ではなく「何ができるか」
 体育が苦手な生徒の多くはスポーツが「できないから」「不得意だから」と言うことが多いです。ここでルーブリック評価を用いて評価を明確にさせることにより、生徒自ら目標を立てることができます。その目標に対する取り組みを評価することにより、「できない」「不得意」な生徒でも体育に意欲的に取り組むことが可能となります。

 体育の授業は、天候や場所など様々な環境において行われる授業です。その中でも、生徒が落ち着いて、意欲的かつ積極的に深い学びを促進していく授業にしていくためには、口頭だけで示すだけではなく、授業内容も生徒の自身の目標も可視化し、自己認識を高める必要があります。そうすることにより、生徒も教員も楽しい深い学びができるかもしれません。

神奈川県教育委員会保健体育課
浦田 奈々美
pdfをダウンロードできます!