Vol.150子供の成長を促す教師の言葉

2022.10

 今回は、教師が子供に掛ける言葉について考えてみたいと思います。

褒めるとは
 褒められることは誰にとっても嬉しいことです。褒められれば、「次も頑張ろう」という意欲にもつながります。教師が子供を褒めるのは大切なことです。
 では、いつでも褒める、何でも褒めることが大事なのでしょうか。子供は、一人一人違います。子供によって言葉の受け止め方や感じ方も異なるでしょう。本人は大して頑張ったと思っていないことを「頑張ったね」と褒められても、自信や成長にはつながりません。反対に、教師が褒めるほどではないと思っていることが、実は本人にとっては「認めてほしい」と思っていることかも知れません。大事なことは、一人一人をよく見ることです。
 また、褒めた結果、子供たちが褒められるために行動するようになったり、誰かを馬鹿にするようになったり、失敗することを恐れるようになったりしては子供の成長につながったとは言えません。
 結果や能力を他者と比較して褒めていると、人との競争でしか自分を受け入れられなくなるかも知れません。そのような自尊感情は、失敗や困難に直面した時には崩れてしまうことも考えられます。その子供自身の取り組んできた過程や頑張り、成長を認め、褒める言葉を掛けることが大切だと言えるでしょう。

寄り添う言葉
 教師の言葉には、「認める」「励ます」「共感する」「期待する」「感謝する」「応援する」「価値付ける」など様々な意味が含まれていることがあります。さらに、もしかしたらその言葉は、こちらの意図に反して、子供には「評価される」「比較される」ものとして受け止められているかも知れません。私たちは子供に掛ける言葉に自覚的になる必要があります。
 どんな言葉も子供たちとの信頼関係が築けていなければ心に届くことはありません。そのような関係が築けていれば、厳しく叱る言葉も、自分の成長を願って言ってくれたこととして、心に届きます。この信頼関係を築くのにもまた、教師が掛ける言葉が大きく関わっています。大切なことは、「一人一人に寄り添い、心から伝えること」だと考えます。

[参考文献]
榎本博明(2015)『ほめると子どもはダメになる』新潮社
八尾坂修、片山紀子、原田かおる(2016)『教師のためのコーチング術』ぎょうせい
八巻秀 監修(2015)『アドラー心理学-人生を変える思考スイッチの切り替え方-』ナツメ社

日野市立東光寺小学校
奥山良太