Vol.111学校における特別支援教育2①
中学校における特別支援教育 生徒のよさ・個性が活きる授業を目指して

2020.09

 子どもと大人の間を揺れ動く中学生と日々接していると、純粋さや優しさに感動したり、エネルギーに圧倒されたりすることが多々あります。そのたびに教員として、人として彼らと関わることの喜びを感じます。少し残念なのは、そうした瞬間の多くが授業以外の時間(給食中や休み時間、部活動、行事等)に訪れることです。学校で過ごす時間の大半を占める授業の中で、生徒がよさや個性を活かすにはどうすればよいのかを考えながら、教科や総合的な学習の時間の授業に取り組んでいます。

 まずは安心して授業に参加できる環境づくりです。以前の勤務校で毎時間「先生、今日は何をするのですか?」と聞いてくる生徒がいました。最初は「前回の続きだよ。」などと答えていましたが、納得していない様子に「どうして?」と聞き返すと「何をやるかわからないと不安じゃないですか。」と返ってきました。それ以来、黒板の左端に内容と時間の流れを示して授業の最初に確認すること、活動が終わったら線を引いていくことを徹底するようにしました。その際「これは書かなくていいよ。」の一言も伝えます。中には板書は全て写すべきだと考えている生徒もいるからです。現在は単元ごとに①単元のねらいと内容②毎時間のねらいと内容を示したプリントを配布しています。自己評価欄も設けることで、生徒が毎時間「何のために」「何を学ぶのか」そして自分は「何が身に付いたのか」を見て確認できる工夫を行っています。

 次に心がけているのは、生徒が自分に合った教材や表現方法を選べるようにすることです。例えば、社会科で資料から時代の変化をつかむ際には①生活文化の様子がわかるイラストや写真②政治の仕組みを図式化した資料③人々の考えが表された文章資料④人口や物の値段などの統計資料など、多種多様な資料が教材として想定されます。一年生のうちは一つずつ読み取り方から学んでいき、学年が上がるにつれて自分で資料を選択する機会を増やします。そうすることで、同じねらいに対して各自が読み取りやすい資料でそれぞれ読み取ったことを基に考えをもつことや、発表し合う中で考えを広げたり深めたりすることができるようになっていきます。表現方法については、書く(PC入力含む)・話す・描く等から選択することで生徒が自分のよさや個性を活かすとともに、他者のよさや個性を認める機会にもなると考えています。

 学校のICT環境が整いつつある今だからこそ、これまで以上に生徒の発言や記述内容を丁寧に見とり、対話をくり返しながら授業を創っていくことが必要だと感じます。これからも、生徒のよさ・個性が活きる授業を目指して目の前の生徒と接していきます。

板橋区立板橋第三中学校
輪湖みちよ
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