Vol.170小学校図画工作科における評価

2023.12

 小学校図画工作科の授業は、多くの子供達にとって楽しい時間です。
「先生!今日は何するの!」、「つくるのって楽しい!」
この様な子供達の想いを大切にして、東京都の図画工作科研究は行われています。私も20年間、図画工作科の教員として子供達と一緒に造形活動に取り組み、子供達の表現の素晴らしさを目の当たりにしてきました。

 楽しい図画工作科の時間ですが、先生方が共通して悩む問題があります。
「図画工作科の評価をどうしよう…」
図画工作科では、子供達が自分の気持ちや想ったことを表現し、その内容は一人一人違い、それぞれに良さがあります。表現に対して評価する際には、様々な配慮が必要です。本稿では、私自身の教育観を踏まえて図画工作科の評価の実際について考えてみました。

1 評価は誰に向けて行われるか
図画工作科の評価は、子供や保護者だけに伝える為ものではなく、教員に対しても向いているものだと考えています。冒頭でも言いましたが、子供達の多くは図画工作科の学びを楽しみます。子供達全員が活動の主役になれる機会があります。しかし授業内容が楽しくなかったら、どうでしょうか。子供達が主体的に学習に取り組む態度を育むことができず、良い評価をつけられなかったとします。この場合、子供に良くない評価がついてしまった原因は何でしょうか。子供に良くない評価がついてしまった原因には様々な要因があったとしても、「自分の指導力がまだ足りなかった」、「子供達の意欲を引き出せなかった」として指導改善に生かしていく姿勢が大切だと私は考えています。

2 表現を評価する配慮
 子供達の表現を評価することは多くの配慮が必要になります。図画工作科の評価の悩みは、数値等の明確な基準を設けることが難しい点にあります。私は、図画工作科の授業において「絵の背景が端から端まで、ちゃんと塗ってあるから良い」という評価をすることはありません。絵の表現においては「あえて塗らない」という選択肢もあるはずだからです。ちゃんと塗ってあれば良い、塗り残しがあると駄目、といった単純な評価は子供の表現の幅を狭めてしまうことがあるので、配慮が必要です。

 子供達にとって、図画工作科の授業は楽しい時間です。図画工作科の評価を考える際は、基本となる教科の評価基準を大切にしながら、子供の造形活動をさらに充実させていくために活用できると良いと思います。

北澤 剛
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