Vol.079特別支援教育の視点を授業に生かす!①
特別支援教育×道徳科「障害特性に応じた道徳科の『発問』とは?」

2019.05

  「平成」時代に産声を上げた特別支援教育。元号が「令和」となった今、さらに特別支援教育が子どもたちの学校生活を支えていく大切なものであってほしいと思います。そこで、CREDUON for TEACHERSでは、奇数月で意欲的な実践をされている先生方から、特別支援教育に関するホットな話題を紹介することとなりました。ご期待ください!

 特別支援教育では、障害特性に応じた指導が基本です。

 例えば「自閉症スペクトラム」という障害の子どもには、どのような「障害特性に応じた指導」が考えられるでしょうか。

 自閉症スペクトラムの子どもは、「他者の心情を想像することが難しい」と言われています。言い換えると、「他者の心情を想像することが難しい」という障害特性があると言えます。

 学校の場で、他者の心情を想像することが難しいと、集団に参加することが難しかったり、友達ともトラブルになったりすることもあるでしょう。

 授業でも困ってしまう場面があります。

 道徳科の授業で、このような発問をすることはないでしょうか。

 「このときの主人公はどんな気持ちだったでしょう?」

 他者の心情を想像することが難しいという特性をもった子どもにとって、このような発問は適切でしょうか。

 道徳科の授業では「どんな気持ちだったでしょう?」と発問することがよく見られます。しかし、自閉症スペクトラムの子どもにとってはその障害特性のために、どう考えてよいかがわからずに困ってしまいやすい発問なのです。

 障害特性に応じた指導を行っていくためには、まずこのような発問を改善しなければなりません。

 例えば、「このときの主人公はどんな気持ちだったでしょう?」ではなくて、「主人公は悲しい気持ちになりましたね。どうしてでしょう?」と発問をチェンジしてみたらどうでしょうか。

 「どうしてでしょう?」は、理由や根拠を尋ねる言葉です。

 自閉症スペクトラムの子どもは、「他者の心情を想像することが難しい」けれども、「理由や根拠を考える」ことは、むしろ得意な子どもも多いです。

 気持ちを尋ねる発問より、理由や根拠を尋ねる発問の方が、道徳科のねらい達成のためにも有効な場合も多いです。もし、そうであれば、気持ちを尋ねる発問ばかりではなく、理由や根拠を尋ねる発問もバランスをとりながら入れていくのがよいでしょう。

 障害特性に応じた結果、クラスの多くの子どもにとってわかりやすくなったり、学習のねらいを達成しやすくなったりすることがあります。これが、授業のユニバーサルデザイン化につながります。

東京学芸大学教職大学院准教授 増田謙太郎
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