Vol.168「探究的な学び」への一歩

2023.12

 私は、16年間小学校の教員をしてきましたが、「探究的な学びとして、私はこんなことをしています!」と胸を張って言える授業をしている訳では、残念ながらありません。ただ、幸いなことに、現在在籍している教職大学院で探究学習について学ぶ機会を得ましたので、次回から生かしたいと気づいたことを綴ってみたいと思います。

 探究の学びは、指導要領でも重要事項とされています。しかし、ここ数年、道徳の教科化、外国語・外国語活動やプログラミングの導入、などがあり、その上、コロナ対応、前倒しで始まったGIGAスクール構想、タブレットを使った新たな学びの形やリモート授業…目の前のことに精一杯で、「探究」に取り組む余裕はありませんでした。そんな中、今回の学びの中で、私にも意図せず探究学習に取り組む機会があったことを知りました。それは、「生活科」「総合的な学習の時間」です。例えば、アサガオを栽培する中で、つるが伸びてきたのを見た子どもたちが、どうしたらうまく育てられるのかを相談し合う、探究的な学びの姿を見ることができました。探究の学びには様々な形があり、国際的に広く扱われているバカロレアや、オランダで普及しているイエナプラン、アメリカで多く取り入れられているプロジェクト学習、等が有名ですが、実は日本でも、20年以上前から導入されてはいたのです。

 しかし、探究学習を研究のテーマに置いている、とあるIB校の研究会に参加して、私が今まで取り組んできた生活科と、探究要素を取り入れた生活科は次元が異なると感じました。その学校では『本質的な問い』を取り入れることをとても大切にしていました。例えば1年生『学校探検』の授業では、ただ2年生に案内してもらって施設について知るだけではなく、「図書室にはパソコンがあったけれど、どうして貸出にパソコンを使っているのだろう。」といった疑問から、その理由や背景を調べて、友達や保護者に発表する、という取り組みにまで発展させていました。

 探究学習は、児童への学びの効果を考えると、ぜひ取り入れていくべきものです。ただ、プロジェクト型の学校でさえ、例えば数学の時間は別に設定されており、低学年では、基礎知識を身につける学習が2/3を占めるそうです。最初は生活科などの一つの単元で、問いの質を吟味することから、徐々に始めてみることが必要かもしれません。さらに『協働的な学び』の視点があると、尚よいと思います。先生がワクワクできてこそ、児童もワクワクできる授業になります。そのためには、協働的な学習は教師側にも必要で、つまり皆で協働していくことが大切になります。

 「また、やることが増えた!」とうんざりするのではなく、まずは、教師間でアイディアを出し合い、楽しんで教材や問いの形を模索することから始めていきませんか。

伊藤 暁美
【参考文献】
藤原さと(2020)「『探究』する学びをつくる」
藤原さと(2023)「協働する探究のデザイン」
pdfをダウンロードできます!