Vol.151音楽科における、リコーダー学習の価値を問い直す

 新型コロナウイルス感染症により、学校では様々な学習活動に制限がもたらされました。音楽科も例外ではなく、これまで学習活動の多くを担ってきた歌唱やリコーダーによる学習に制限が加えられています。
 そうした中、飛沫感染のリスクを避けて器楽学習を行うため、代替楽器による学習も様々工夫されています。中でも1人1台使うことのできるミニキーボード(図1)は、器楽学習の救世主という呼び声も高く、様々な学校現場で取り入れられています。

図1 カシオミニキーボードSA-46

 そこで桶田(2021)によるミニキーボードとリコーダーの比較を参考にして、それぞれの特徴を筆者が整理しました(表1)。

表1 ミニキーボートとリコーダーの比較

 このように比較すると、ミニキーボードには弾くことに集中できるため学習に取り組みやすくなるというよさがあり、一方のリコーダーには吹き方で様々な表現を工夫できるというよさがあることが分かります。
 ここで学習指導要領に立ち返ると、改訂の趣旨の1つに「音楽科における技能は,「思考力,判断力,表現力等」の育成と関わらせて習得できるようにすべき」という記述があります。この点から2つを比較すると、様々な表現が可能となるリコーダーに分があると考えられます。
 また鈴木(2022)によると、認知科学の世界では、身体化された知識が重要視されているそうです。様々な感覚を総動員したリッチな経験をすることで脳内が活性化され、経験が知識として構築されるということです。この点でも、呼吸をはじめ、身体の様々な部分を使って表現をするリコーダーに、より大きな価値があるように感じられます。
 このように感染症の拡大防止のため、やや取り上げにくくなってしまった感のあるリコーダーの学習ですが、あらためて検討してみると様々な価値があることに気付かされます。他の楽器でも代替できる学習と、リコーダーでしか出来ない学習をよく意識して、授業づくりを工夫していきましょう。

[主要参考文献]
桶田加代(2021)「新しい生活様式の中の器楽指導の試み:ミニキーボードを使った授業の成果と課題」『音楽教育実践ジャーナル』19巻32号、pp.35-42。
鈴木宏昭(2022)『私たちはどう学んでいるのか 創発から見る認知の変化』ちくまプリマー新書、pp.54-59。

中野区立中野本郷小学校
小田康介