Vol.088子どもたちの強みを生かす②
聴覚優位な子どもへの指導・支援

2019.09

 先生が教科書を読む声、友達のくしゃみ、校庭で盛り上がるサッカーの応援、ヘリコプターの音、先生の指示する声etc…教室の中は様々な音の刺激であふれています。  沢山の雑音があると子どもたちは疲れてしまいますね。
 しかし、担任の先生の少しの工夫で多くの刺激の一つであるその音が、子どもの学習を助けるための情報になるとしたら?

 普段行っていることやちょっと取り入れると効果的な指導・支援を少しご紹介します。

例1 めあてやキーワードの伝え方 「大事なことは声にだすべし」

 単元名や授業の目当てを整理して板書することは、視覚優位な子供たちにとって有効な手立てです。さらにそれを教師が読み上げる、子どもたちが声に出して読む時間を取り入れてみましょう。

 音読することが苦手で読み上げるスピードについてこられない子も、先生や友達の声を聴いて学習の大まかな見通しを立てることができるでしょう。
新出ワードやキーワードも同じように声に出すことが効果的でしょう。

例2 意識的にほめる 「教師はほめ名人たれ」

 褒めることや肯定的な反応を教師がすることは、聴覚にうったえかける支援の一つとなります。肯定的な言葉かけはやる気を引き出すとともに、行動への価値づけにもつながります。
 大きな声で褒める。小さな声で褒める。集団を褒める。個人を褒める。状況によって使い分けましょう。 学習内容に関してや、目指す児童像に即した行動等を具体的に伝える必要があるでしょう。

例3 音でメリハリ 「指示の一部は音に任せてみる」

 コンビニに入ったとき、お風呂が沸いたときなどお決まりの音がありますよね。
教室の中でもお決まりの音の合図があるとどうでしょうか。

話し合い活動をするので、グループになって話し合いを始めましょう。」と指示を出さずとも、お決まりの音の合図を決めておけば「はい、話し合い始め。ピンポーン(音)」で伝わります。
 子どもによって苦手な音や聞き分けにくい音もあります。音の種類に配慮すること、たくさんの音を使うことは避けたほうがいいことは念頭に置いておいたほうが良いですね。

 聴覚優位な支援が有効にできるコツは、ポイントを絞ることと、一度で確実に聞こえるようにすることです。例で取り上げた支援はどれも大変な準備や技術は必要ありません。先生たちのちょっとした意識で聴覚優位な子どもたちにとっても、他の子どもたちにとっても「分かる」指導スタイルになるでしょう。

江戸川区立新田小学校教諭 橋本 千里
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