Vol.077プログラミング教育導入に向けた現状②
コンピュータサイエンスを土台としたプログラミングの活動

2019.04

小学校3年生~電気アドベンチャーからプログラミングに~

 今回ご紹介するのは、小学校3年生で理科や社会とのクロスカリキュラムとなった自己実現活動「電気アドベンチャー」という活動です。社会「身の回りの便利」の話し合いの中で、便利なモノ・コトには「電気」が使われていることが多いことに気づいた子どもたちに、さらに電気がどのように変わると便利になるかを問い返しました。意見をまとめると、便利の元が「光る」「音」「動く」というキーワードで子どもの便利と感じていることが説明できるとわかり、実際に電気を自由に使いこなしてみる理科「電気アドベンチャー」という活動がスタートしました。電気の発見から、フランクリンが電気を使いやすくして、エジソンが電気の利用への道筋を作ったことを調べたりしました。その後、電気を作って、LEDを光らせたり、エジソンを真似て竹炭を作ってみたり、回路を作ったりしました。電気を思い通りに動かすためには、コンピュータが使われていることを確認し、どのような制御をするかを人間がプログラミングして決めていることを共有し、実際に子どもたちとプログラミングに挑戦することになりました。

プログラミングで「光の位置」を思い通りに動かす
 プログラミング言語「Processing」を使い子どもたちは、point(50,50);の数値の部分を自由に変更します。すると実行結果であるディスプレイ上の「点」の場所が変わることに子どもたちは驚きます。2つの値を繰り返し変更することで、値が位置を決めることに気づいた段階で、教師は「座標」の説明をします。子どもたちは数値を変更して点の場所が思い通りに変わるだけで大興奮。幾度と試していきます。

理科の実験で「光の3原色」を知る
 プログラミングの活動の中で、理科専科の先生と相談をしてLEDの実験を行いました。赤緑青の3種類のLEDを渡すだけで、子どもたちは光を混ぜ合わせ、紫や3色を合わせた白を作ります。

プログラミングで「光の色」を思い通りに作り出す
 子どもたちはこの段階で、点point(50,50);や線line(20,30,60,70);を自由に描くことができています。すると「色をつけたい」という希望が子どもから出るので、stroke(100,100,100);というコマンドを教えます。値の範囲だけ0-256ということを伝えて子どもたちは今まで同様に値を変更しては実行をして、値の意味が(赤,緑,青)の光の強さだと気づきます。子どもたちは「LEDと同じだ」と声に出し、最近実験した理科の既習を想起します。

顕微鏡を使ってディスプレイを見ることで、プログラムの値が実際に光り方を決めていることを実感させる
 活動の最後に、「本当にディスプレイはLEDと同じなの?」と切り返し、顕微鏡を使ってディスプレイを観察します。実際に、設定した値の通りに素子が光っていることを確認すると、「白が3つの色でできていることがよくわかった」などの感想が出され、プログラミングを通して理科「電気の利用」「光」の学習内容を深めることができました。

東京学芸大学附属竹早小学校教諭 佐藤正範
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